大東会館 過去の活動の記録

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武士道研究会第三十四回例会・新年会(正月二十五日《火》)ご案内

加治将一著『幕末維新の暗号』を読む
―松陰は明治天皇のすり替へを計画した南朝革命の志士であったのか―
発表者・日 下 晋 太 郎
本小説は、主人公がフルベッキ写真(維新の志士たちの集合写真)の調査依頼を引き受けるところから始まり、そこに写ってゐる維新の志士達を調べるうちに、明治維新が実は南朝復興を志す志士達による革命であった事が次第に明かされてゆく筋書きとなってゐる。▼ただ、作者は北朝天皇による南朝の復興といふ矛盾を解決しようとして、明治天皇が明治初年に南朝の血統を引く或る人物とすり替へられたとしてゐる。そして、この南朝の血統を引く人物こそが、フルベッキ写真の中央に写る大室寅之祐、その人であるとする。また、その故に重大な秘密を宿すこの写真が維新以降、回収され破棄されたとしてゐる。▼本編は、作者のユニークな発想に基づく一種ダイナミックでミステリアスな歴史小説であり、しかも広範囲な資料調査と周到な現地取材に裏付けられた労作と言へよう。▼だが、明治維新は、あくまでも「維新」であって「革命」とは正反対に位置するものである。また、吉田松陰は維新「勤皇」の志士であって、決して革命家ではなく、なにより、孝明天皇を崇敬して已まぬ松陰が、その御皇子である明治天皇のすり替へや弑逆など計画しようはずがあり得ない。▼ただ、本小説で描く内容が多岐に亘るため、一々、枝葉末節を問はず、今回は右の諸点に絞って文献資料を掲げて反証したい。▼一小説如きに目くじらを立てるのは狭量に過ぎるとの謗りもあらう。だが、取り上げてゐる内容がこと皇室に関はる看過し難い事柄でもあり、正しい歴史を教はってゐない戦後世代の読者の心を大きく惑はせる可能性もある。▼よって、この度は、敢へて本小説の根幹を成す「松陰の明治天皇すり替へ説」を批判し、本小説の筋書きを根底より覆して、以って不肖、日下の『幕末維新の暗号』評としたい。

■日時 正月二十五日(火)午後七時より
■会場 大東会館 港区北青山三の三の二七
■幹事 藤本隆之/福永武/細見祐介/大山晋吾
■会費 千円(但、新年会の懇親費、学生は無料)
※新年会に於ける、酒・肴のご提供は、大いに歓迎致します。